地方×ECの可能性を切り拓く!モールの仕組みと購買心理の本質
地方ビジネスの新たな可能性として大きな注目を集める「EC活用」。しかし、多様化するプラットフォームや急激な消費者行動の変化に対し、「具体的にどこで、どのように戦うべきか」に悩む事業者も少なくありません。
2026年8月27日、mark MEIZANでは、株式会社コマースファクトリー代表取締役の岡本駿平氏を講師に迎え、日本のEC市場の最新動向から、ECモール活用術、SNSとECが融合したトレンド(TikTok Shop等)、さらに地方企業が成果を上げるための戦略的アプローチについて、実際の現場の事例を交えて詳しく解説していただきました。

日本のEC市場の現在地:7割を占める「ECモール」のトレンド
現在、日本のB2C EC市場規模は約15兆円に達しており、毎年着実に成長を続けています。その中で最も重要なポイントは、全体の約7割がAmazon、楽天市場、Yahoo!ショッピングといった「モールEC」によって形成されているという点です。
- Amazon(約5兆円弱): 購買意欲が明確なユーザーが多く、全体の約6割が自ら「検索」して買い物を楽しむ「目的買い」の市場。
- 楽天市場(約4兆円): 買いまわりイベント(お買い物マラソンやスーパーセール等)に合わせた「ウインドウショッピング型」の市場。近年はヘビーユーザーの囲い込み(ダイヤモンド・プラチナ会員)が進む。
- Yahoo!ショッピング(約1.5兆円): Amazonと楽天の中間に位置し、料金改定などを背景に現在伸び率を高めている市場。
岡本氏は、「自社ECは路面店のようなもので、自力での集客・ブランディング・システム運用が必要となるためコストがかさみやすい。まずは圧倒的な集客力と信頼性、物流インフラが整っているモールECから参入するのが王道」と解説しました。

新興プラットフォームの台頭
従来の「3大モールを押さえれば安心」という時代から、消費者の多様化に伴い新たなプラットフォームが台頭しています。
特に注目の存在として挙げられたのがTikTok Shopです。ショート動画やライブコマースを通じてアプリ内で直接商品を購入できる仕組みで、ローンチから短期間で急速な成長を遂げています。
また、格安ECとして知られるTemu(テム)も、日本メーカーの出店が可能になったことで新たなチャネルとして浮上。食品(お米など)を中心に需要が急増しており、既存モールとは異なる格安購入層の取り込みが進んでいます。さらに、コスメやファッションに強いQoo10も人気を高めています。今まではAmazonや楽天だけだった選択肢から、他のプラットフォームの登場により事業規模に合わせて市場選択をする重要性が強調されました。
地方企業の成功事例:宮崎県「オカラット」のプロセスエコノミー
地方企業が全国、さらには世界へ展開するにあたり、強力な武器となるのが「制作背景」や「物語」の共有です。その好例として、宮崎県でおからを使った食品を展開するブランド「オカラット(OKARAT)」の事例が紹介されました。
既存の楽天やAmazonでは苦戦していた同社ですが、参入障壁の低いTikTok Shopへ戦場を変更。通常は98%が廃棄されてしまう「おから」の価値を再発見し、クッキーとして美味しく生まれ変わらせるストーリーを短尺動画(ショート動画)で発信しました。
工場長をキャラクター化した親しみやすいコンテンツや制作プロセスを見せる「プロセスエコノミー」の手法が共感を呼び、動画は数千万回再生を記録。爆発的なバズを生み出し、月勝1,000万円規模(年商約1億円)へと急成長を遂げ、TikTokトレンド大賞の受賞にも繋がりました。

変化する消費者行動・ルールへの適応と「不安」の解消
ECにおける最大の購入障壁は「失敗したくない」「損をしたくない」という心理的ハードルです。実店舗のように商品を手に取ったり試着したりできないため、消費者は常に不安を抱えていると話します。
かつては「楽天やAmazon内で直接検索して商品を探す」行動が主流でしたが、現在は「SNSで情報収集や比較検討をして欲しいものを決めてから、Amazonや楽天で購入する」というクロスチャネルでの購買行動が一般的になっています。
また、薬機法(美容・化粧品表現の規制や緩和)や景品表示法(特典・値引き制限)など、ECを取り巻く法律・ルールの変化も非常に激しくなっています。「数年前まで通用していたテクニック」や「同じ見せ方」に頼り切るのではなく、最新の環境変化を察知し続けることが求められます。
岡本氏は「商品の魅力や自社目線のメリットをアピールするだけでなく、他社商品のネガティブなレビュー(使いにくさ、サイズ感など)を徹底的にリサーチし、自社ページでその不安を先回りして打ち消す工夫が不可欠」だと語りました。
また、鹿児島県の「ルックコンタクト」の事例も紹介。どこでも買えるコンタクトレンズ(型番商品)でありながら、商品画像に「実際に店頭で白衣を着たスタッフが商品を持っている写真」を採用したことで、実店舗のような安心感を創出。ページクリック率(CTR)が2倍に向上し、クレーム減少やリピーター獲得につながった事例は、地方ECにおける大きなヒントとなりました。
成功するための実践アプローチ
EC市場の変化が激しくなり、やること(施策)の数が爆発的に増えている現代において、不正レビューや検索順位ハックといった小手先のテクニックはもはや長続きしません。成果を出し続けるために押さえるべき4つのアプローチが提示されました。
- 起点を設計する:誰にどう届けるのかを考え市場を選び戦略に落とし込む。
- リサーチとクリエイティブを深める: 競合のレビュー分析からユーザーの真のニーズや不満を抽出し、クリエイティブを複数パターンでABテストする。
- 小手先の有効期限を知る:アルゴリズムの裏をかくコテ先の技術ではなく、商品の魅力と信頼をどう届けるかに注力する。
- 継続する、やりきる: TikTokで月1,000本の動画を投稿する、あるいはインフルエンサー数百人に直接泥臭くアプローチするなど、絞り込んだ戦術を徹底的にやり切る。

EC運用において地方であることはディスアドバンテージではない!
EC市場は非常に変化のスピードが速く、ルール改定やユーザー行動の変化が毎年起こります。一見すると参入障壁が高まっているように感じられますが、「地方であること」「小規模事業者であること」は決してディスアドバンテージにはなりません。
むしろ、地域ならではのユニークな食材・製品、作り手のストーリー、丁寧な顧客サポートといった要素は、SNSやショート動画、ライブコマースという新しい時代の波に乗ることで、大手企業以上の爆発力を持つことができます。
これからECを始める方も、すでに運用中で伸び悩んでいる方も、まずは「自社の商品を本当に届けたい相手(ターゲット)は誰か」「ユーザーの不安を解消できているか」という原点に立ち返り、自分たちが勝てる市場で愚直に施策をやり切ることが成功への第一歩となります。鹿児島をはじめとする地方から全国・世界へとはばたくEC成功事例が今後さらに増えていくことが期待されます。
mark MEIZANでは今後も、起業や新規事業のヒントを得られる様々なイベントを開催し、鹿児島から新たなビジネスの創出に挑戦する皆さまを後押ししてまいります。また、起業や経営、新規事業をはじめ、クリエイティブやエンジニアリングに関して、各分野で経験豊富なスペシャリストによる相談対応も行っております。ぜひお気軽にご利用ください!